front rear
(nagai3+117)2
ACT 2.5 (Wiper)2 その2
しずかにジャズが流れる店内の雰囲気とは逆に,驚愕の事実が明かされようとしていました。真剣な表情が本人の意図に反して馬鹿馬鹿しいnagaiさんの表情は,このとき,いつにも増して馬鹿馬鹿しく見えました。
「近年,確かにワイパーブレードの性能は向上しているしている。それはワイパーブレードの取り付け方式の変化にもよるところが大きい。バヨネットクリップ式からネジ止め式を経て,U字クリップ式(注4 )に進化したワイパーブレードは耐久性,脱着性能を驚異的に高めてきた。U字クリップ式の登場によってワイパーブレードの進化はほぼ完成されたといってもいいだろう。」
「それじゃあ,ますますフライングワイパー現象は発生しにくいということになりますね。ワイパー管理のしやすい状況と,ボクたちの危機意識の向上によってフライングワイパー現象は十分に予防可能じゃないですか。」
「あまいな。先に私もフライングワイパー現象に遭遇したといっただろう。」
ボクのセリフにかぶせるようにnagaiさんは言った。
「でもそれは,nagaiさんの紅いクルマが旧式のワイパーだからじゃないですか。」
「しかしだ。クルマの新旧にかかわらず,近年フライングワイパー現象の目撃例,遭遇例は増加しているとゆう調査報告があるのだよ。ワトスン君!!」
「ええっ!!!」
「私の体験を話そう。ある初夏の風が肌に心地よい休日の昼下がり,上機嫌で私は117を走らせていた。天気は快晴。まさにビューチフルサンデーだ。その刹那,突如としてワイパーが跳ね上がり,後方にサヨナラしたのだ!私に告別の言葉を選ぶ猶予もあたえず,ワイパーはそのまま後続車のキャディラックのフロントガラスに命中!!その生涯を閉じた。私はそのままアクセル全開!一目散に逃亡する(注5 )このときの初動動作の機敏さにより,この事態は最悪の惨事(注6 )の回避に成功。いやぁー,今思い出しても生きた心地がしないよ。ハハハ。」
「…。」
「しかし驚くのはここからだよ。なんとワイパーはワイパーアームごと吹っ飛んでいたのだ!!どう!ねねっ,ビックリしたぁ?」
「やっぱり,クルマがボロだからそうゆうめに遭うんですよ。」
「フッ…。確かにアームごとのフライングは,117の老朽化が主たる原因だが,それでは近年のフライングワイパー現象の増加の説明にはなるまい。先の調査報告書によると,購入1年目の新車のワイパーが吹っ飛んだ事例もあるのだ。また,交換して半年にもならないワイパーが吹っ飛んだ場合もある。クルマの老朽化だけで説明がつくかね。もちろんワイパーブレードの取り付け方がマヌケだったなんてオチじゃないよ。」
「ワイパーの劣化がフライングワイパー現象の引き金になるのは確かですよね。劣化の可能性が少ないそれらがなぜ…。」
「フライングワイパー現象を体験したクルマをあらゆる観点で比較分析すると,たったひとつだけ共通する点があるんだ。フライングワイパー現象を体験したクルマは…,どれも駐車状況が青空駐車だったのだ。」
「青空駐車…。確かに車庫駐車と比べてクルマの劣化は著しい…。直射日光や風による影響は車庫駐車の比ではありませんね。でもそれだと現象が近年増加している説明にはなりませんよ。むしろ昔の方が青空駐車率は高かったはずです。」
ボクが疑問を口にすると,nagaiさんはオーダーしてあったロブ・ロイを飲み干しゆっくりと返答した。
「日光や風のほかにもクルマに大きな影響を与えるものがあるだろ。しかも近年,その性質が激しく変化したものが…。」
「えっ…,あっ,雨!さ,酸性雨かぁ!フライングワイパー現象が増加したのは,酸性雨(注7)がもたらす被害が増大したからなんだ!」
「そのとーうり!森林の木々が酸性雨によって弱い個体から枯れるように,クルマも全体ではその被害が表面化しにくいのだが,確実にその被害は年々増大しているんだ。」
「クルマの外装部品で最も脆弱なワイパーだと,その被害が如実に表れるのか…。」
「酸性雨の発生原因は諸説あるが,その主たる原因は人間の大気汚染だ。もちろんクルマの排気ガスも大気汚染の要因のひとつ。まさに自分で自分の首を絞めていることになるな。」
「自然とクルマの共存…。クルマが環境破壊の権化とはいいませんが,まったく否定することもできませんね。皮肉なもんです。」
「自然にやさしくとかよく耳にするが,実際にそのために私たちが何を選択していくかは難しい。言葉で言うよりはね。大気汚染はクルマや工場を廃止することで飛躍的に改善されるだろうが,現実問題として不可能だしな。」
「アイドリングストップ(注9)も効果的ですが,状況によってはかえって排ガスの成分が悪化(注10)するなんて聞きますしね。」
「現実の地球環境の悪化は目を覆うばかりのものがある。そして,それを改善していく効果的手段がないのもまた事実。これから先の未来のため,私たちはこの事実から目をそむけてはいけないんだ…。」
「今回の締めそれですか。人よりいっぱい排ガスまきちらしてて,よくいいましたね。」
「マスター,すんませーん。ロブ・ロイおかわりぃ」
つづく のか?
次回:ACT 3.0 (Cooler)2
よい子の解説コーナー 注4 ワイパーブレードの取り付け方式
クルマによってワイパーの取り付け方法はおよそこれら3パターンがある。現在主流になっているU字クリップ式はワイパー交換時に工具を必要とせず,誰でも容易に脱着が可能である。詳しく知りたい人は近くの大人の人に聞いてね。注5 逃亡 良い子のみんなはマネしないようにね。
注6 惨事 エライコトニナリマス
注7 酸性雨 ph3または4の酸性の雨。ちなみにトマトジュースはph4でリンゴジュースはph3。
酸性雨はジュースじゃないのでおいしくないよ。念のため注9 アイドリングストップ
日本では主に駐車中はエンジンを止めようという運動。ドイツなどでは、信号待ち等での停車でもエンジンが自動的に止まり、再びアクセルを踏むとエンジンが再起動するという便利な装置。すでに法制化&標準搭載されており、ドイツでは酸性雨の森がもとの緑に戻りつつあるという。注10 排ガスの成分が悪化
本来は排ガスが悪化するのはマフラーが主な原因である。日本では排ガス規制が緩いので始動時に基準値以上の排ガスが出る。また、環境エンジンで有名なM社の欧州仕様のマフラーは性能的に画期的で、環境に相当考慮したものである。だが、法規制が強化されないかぎり日本への投入はないそうだ。それでいいのかGDI Club!管理人注:酸性雨がフライングワイパー現象の原因かどうかは、あくまでもnagaiさんの説であり、保証の限りではありません。いやぁ、ことわっておかないと、ほんとに信じちゃう人がいるんだもん。
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