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117 DAYS 2の手紙 拝啓
桜のつぼみも膨らみはじめ,山に,里に,野にも春のかおりがプンプンと蔓延しだす今日この頃です。みなさま,今年の春はとのようにお過ごしになられるのでしょうか。私はいままでと一味ちがった春になりそうです。
さて,前回の手紙で「全身患部徹底摘出大手術」の詳細についてお知らせすると告知しておりましたが,今回はワイパーについて報告させていただきます。予定の変更により,関係者,そして皆さま方に多大なご迷惑をおかけすることに謝意を述べさせていただきます。どうかお許しくださいませ。
さて,さて,117姫のワイパーなのですが,結果報告からさせていただきますと,新品同様にリニューアルされました。ゆえに現在のは2代目ワイパーくんです。 初代ワイパーくんは正しくは「THE・ワイパーズ」といい,ローズさん(左ワイパー担当)とジャックくん(右ワイパー担当)おふたりの人気デュオでした。このおふたりは20年以上にわたり,117姫のワイパーとしてご活躍されてましたが,先日の不幸な事故により,おふたりのワイパー生活にピリオドが打たれました。その事故の模様は,資料を基に再現編集したものを以下に掲載させていただいております。ご参考ください。
ほそうで文庫「THE・ワイパーズ伝説」より一部抜粋
このときすでに,ジャックの体を固定させていたボルトは,その本来の機能を著しく低下させていた。そして,まるで予定されたシナリオのように,時間はその瞬間をむかえるためだけに時を刻んでいた。誰にもその運命を知らせることなく。「わーっ!!!」
ジャックの悲鳴の一瞬の前,足元のボルトは無情にもジャックの身体を支えることを放棄し,弾け飛んだ。カタパルトから飛び出すようにジャックの身体は大空に飛翔する。
「じゃーックゥ!!」
ローズの声がジャックの後を追う。
「ローズ!君は大丈夫だ!こんなとこで死んだりしない!結婚し,たくさんの子どもを産み,しあわせに…」
ジャックの言葉は無情にもその想いをすべて伝えきることなく,かき消されていく。
「ああ…。ジャック…。」
ローズは溢れる涙の中で,ただジャックの名前を繰り返すしかなかった。
あまりにも悲しい物語です。私はジャックの尊い犠牲を決して忘れることはないでしょう。2度とこのような悲劇を繰り返してはならないのです。工業技術・科学技術の進歩は私たちの生活を激変させました。それは人類の工業力・科学力は無限であり,万能であると我々を増長させるに十分でした。これから,常に自分自身の慢心を戒めていくよう努めることを皆さまに誓います。
この事故の後,ローズは引退を表明。「THE・ワイパーズ」は伝説になります。2代目ワイパーを襲名されたのは,ロミオくんとジュリエットさんおふたりの「ワイパー・ペア」です。このおふたりは117ドナー1号のワイパーとして活躍されていました。ドナー1号が抹消登録された後は現役を退いておられましたが,今回,再結成されたのです。
1度は引退されていたとはいえ,その姿はいまだデビュー当時を彷彿させるものがあり,再結成の際には,なんの問題もありませんでした。そして「ワイパー・ペア」は今日も元気に可動しております。
「ワイパー・ペア」のおかげでワイパー交換は迅速に処理されましたが,もし「ワイパー・ペア」がいてくれなかったらどうなっていたでしょう。ワイパーは車種ごとに微妙に異なっているため,他のワイパーの流用が困難のようです。クルマが旧くなるとますます純正部品の入手が困難となります。皆さまどうか,かけがえのないワイパーを大切にしてください。失ってからではおそいのですから。
敬具
次回:こんどこそ「全身患部徹底摘出大手術」。
'げすとぶっく'に記帳しようかな その前に'げすとぶっく'をみる
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